節約にゃんちゅうファミリー

節約生活に励んでいるにゃんちゅうファミリーです。子育てなどの日々の悩みなどを書いています。

<小説>短編集で話が繋がっていく物語~最後に感動あり~

箱庭図書館 乙一作 初版2013年

読書時間:4時間

オススメ度(5段階評価):4

#短編集#高校生#ミステリー#感動#初心者向け#時間がない方に

短編集で全ての主人公が最後に繋がり、ホッとしてハッピーエンドで終われる話を探している方にオススメです。本を読み始めたビギナーの方にもオススメです。

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はじめに

僕は乙一さんの小説が大好きです。ホラーやミステリーでも最終的に物語が丸く収まる所に惹かれています。高校生の時は乙一さんの本を読み漁っていました。
今回はどんな不思議な物語が書かれているのか読む前からワクワクしています。

概要

まず今回の小説は乙一さんによる企画物です。というのも読者にボツとなった原稿を送ってもらい、それに筆を加え仕上げるというものです。
この小説は6つの短編からできています。6つの話が「箱庭図書館」この小説内で交わり、作り上がっています。それぞれの人に物語がありどのように交差していくのか、乙一さんとしてこれらの話をどのように丸く料理していくのか見所です。
各話の主人公とそれぞれの話につながってくるキーポイントをピックアップしていきます。

内容

この小説は文善寺町という図書館のある町で繰り広げられる物語です。文善寺町は物語を紡ぐ町です。潮音さんという本好きの方が小説全体のバランスをとって展開されていきます。

小説家のつくり方

主人公:山里秀太 キーポイント:潮音

山里秀太は小説家です。ある小説のあとがきに次のように書いています。
小学生の頃H先生という読者に向けて書き始めたことが小説を書き始めたきっかけでした。先生からもらった新品のノートに物語を書き、先生はそれに感想を書くこのやり取りが小説家として始まりです。

秀太には潮音という活字中毒でいつも本を読んでいる姉がいます。続きが気になるとバスから降りられなくなったり、降りてもバス停で座って読み続けるほどです。雪の日にバス停で本を読みだすと体に雪が積もるほどです。

そんな姉は山里秀太の小説のあとがきを読んである不自然なことに気が付きます。あとがきの内容に矛盾が生じている。この矛盾こそ秀太が本当に伝えたいことなのでした。それは一体何のでしょうか。。。山里秀太が小説を書き始めた本当の目的とは。。。

コンビニ日和!

主人公:僕 キーポイント;島中ちより

僕と後輩の島中ちよりは、あるコンビニでの深夜のバイト中に事件が起こります。このコンビニは夜間に店を閉めるタイプで大手のコンビニではありません。閉店間際に強盗が入店します。強盗は僕の首にナイフを近づけレジの金を全て出すように言います。言われる通りレジの中を見せますが、売り上げの悪いお店のため中身はほとんど空。そんな時、後輩の島中ちよりは「殺すなら、殺せばいいじゃない。そんなゴミムシ、生きていてもどうせ資源の無駄なんですから。スパッといってくださいよ。」と。お金を要求する強盗。人質に取られる僕。僕のことは殺してもいいからという島中ちより。そんなとき警官がたまたま入店してきて事態はさらにカオスに。僕は殺されずに済むのか。強盗は改心するのか。というよりもこの話はそんな簡単な話なのか。。。最後のどんでん返しにびっくりさせられます。

青春絶縁体

主人公:山里秀一 キーポイント:特になし

今回の主人公は小説家の作り方で登場した山里秀一。高校に入学後、何か部活をしたいと選んだのが文芸部。部員は小山雨季子先輩と二人だけ。部室を訪れた初日に「あんた、性格が暗いのよ。死んでよ。」と鋭い目つきで言われました。僕の口から出てきた言葉は「暗いですが、なにか」でした。自分をさらけ出せる部室で先輩との罵詈雑言が日々のコミュニケーションでした。最初は本を読むの部活でしたが、先輩の小説を書きましょう!の一言で変化します。小説は本気で書くのではなく、お互いを罵りあうコミュニケーションのためでした。小説の主人公はお互いの名前で、何かを失敗する話。読み終わった後はビリビリに破って捨てるという流れです。この話はくすっと笑えるシーンが多いです。文芸部での楽しい憎たらしい会話を楽しんでください。

ワンダーランド

主人公:僕、殺人鬼の2人 キーポイント:鍵

僕は小学校に行く途中に鍵を拾いました。この鍵がどこの鍵なのかをさがす冒険が始まるのです。学校や家では優等生のイメージを持たれていた僕。そんな僕は鍵にあう鍵穴を見つけている最中に事件に合います。

殺人鬼は頭痛を抑えるために女性を殺して町から町へ移動しています。自分の持っているナイフと刺したときの肋骨の形が合う女性を探しているのです。ここで殺した女性を冷蔵庫に保管していたのですが、それをどうやら誰かに見られてしまいます。

2人の主人公が交差する物語。2つの物語を並行して書かれる乙一ワールド。独特の書き方で物語は進んでいきます。殺人鬼を目撃した僕はどうなるのでしょうか。殺人鬼はどうするのでしょうか。

王国の旗

主人公:小野早苗 キーポイント:黄色の王冠

主人公小野早苗(高校生)は子供の国に迷い込んでしまいます。子供たちは昼は親元から学校に通い、夜間に子供の国で過ごし、明け方に親元に戻るという生活をしています。幼い子供はなついてくれて、子供たちから王国の住人になってほしいとお願いされます。子供の国で過ごして1日、幼い子供に大人たちからお金を盗む方法を教えている姿を見て年長者と口論になります。口論の末、子供ではなく大人認定されてしまい、牢獄に入れられることになります。優しい子供2人の助けもあり、バスで元の社会に戻ることが出来ました。あの子供の王国はどこにあったのか?本当にあった出来事なのか?あそこで過ごした時間は夢だったのか?なんとも不思議な物語です。

ホワイトステップ

主人公:近藤裕喜 キーポイント:足跡

この話では今までのキーポイントが多く出てくる話でこの小説を上手くまとめています。ある大雪の年始、することがない近藤裕喜は公園を散歩していました。すると面白い光景が目に映るのです。誰もいないはずの公園に足跡だけが出現しているではないですか。存在は目にみえませんが、確実に足跡はあります。そしてその足跡の相手も自分の足跡だけが見えている様子。文字で会話をすると、日にち時刻場所も同じということが判明。これはパラレルワールドではないかと考えていきます。ある選択をしなかった時の世界がそこにあるのです。

存在は見えないが、雪の上の足跡にはしっかり存在があります。雪で会話もできます。雪がつないだこの世界。本当は誰の世界をつなぐ物語なのでしょうか。この小説の中で一番好きな話です。この話を読むと乙一ワールドにはまること間違いなしです。

まとめ

乙一さんの作るストーリーはやはりワクワクしました。ストーリーの異なる主人公がどんどん繋がっていきます。クスっと笑える話、少しホラー系な話、存在したら楽しそうだなと思える話、少し感動する話など盛りだくさんの内容でした。そして最後にすべてが丸くまとめられて、僕の心は満足しました。これからの乙一さんの本を紹介していこうと思います。