節約にゃんちゅうファミリー

節約生活に励んでいるにゃんちゅうファミリーです。子育てなどの日々の悩みなどを書いています。

<小説>過去を振り返るとしたら?

月の上の観覧車 荻原 浩作  初版2014年
読書時間:4時間
オススメ度(5段階評価):3
#人間ドラマ#人生の振り返り#哀愁#レトロ#短編集
他人の人生を少しだけ見たい方にオススメです。短編集なので時間がない方でも読めます。

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はじめに

今まで読んだことがない作家の作品を読みたく荻原 浩さんの本を手に取りました。短編集なので、もし自分に合わなくても読み切ることができると思いこの作品を選びました。

1話あたり50ページもないのに、心情や情景がしっかり表現されています。まるで切ない映画を見ているような話がいくつもあります。そして結末はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、読者の想像に委ねられています。他の荻原 浩さんの作品をもう少し読んでみたいと思える作品でした。

概要

この作品は8人の主人公が様々な地域や時代を生き、過去を振り返って未来に向かうという話です。過去を振り返るにあたり、それぞれの話にキーアイテムが存在します。そのキーアイテムが題名になっています。

全ての主人公に共通して共感できるポイントが2つあると考えています。1つ目がキーアイテムが僕たちの身の周りにある物であることです。レシピ帳や金魚、上京するときに通るトンネルなどです。身近にある物が思い出を反芻させます。2つ目がそれぞれの人が身近にありそうな人生を歩んでいる所です。架空の話には思えないような、まるでクラスメートの話を聞いているようなリアリティーがあります。

内容

トンネル鏡

「トンネル」は上京する時に乗る電車で必ず通る所。大学に入学する時、結婚のあいさつの時など、上げればキリがないくらい通ったトンネル。田舎には自分を育ててくれた母がおり、その思い出が切なく書かれています。

上海租界の魔術師

上海租界の魔術師」とは祖父のこと。祖父は認知症を患いながらも趣味でマジックを披露します。認知症の進行と共にマジックを間違えてしまうことも多くなってきます。主人公はマジックに興味を持つようになり、祖父に弟子入りしようとしますが、課題をクリア出来たら言われます。課題をクリアすることは出来るのでしょうか。こんな祖父がいると面白いだろうなと思えます。

 

レシピ

「レシピ」とはある主婦の今まで作ってきたレシピ帳のことです。一人暮らしをし始めた時に作った料理、初めての彼氏に作った料理、結婚してから作るようになった料理、子供が好きな料理などが書かれています。これから料理を続けていく限り、生きている限りこのノートのページは埋まっていくのです。思い出も増えていきます。

 

金魚

「金魚」は亡くなった嫁と新婚時代に飼育していました。祭りの金魚すくいで取りました。転職によりうつ病を患った主人公。仕事は住宅関係の営業職。営業の最中などに金魚を見ると思い出を反芻します。大切な人を失い、うつ病にも悩まされ、それでも生きていかなければならないストーリ。どのように主人公は乗り越えていくのでしょうか。

チョコチップミントをダブルで

「チョコチップミント」は遊園地で家族3人で食べた思い出のアイスです。男性の主人公は妻と離婚し年に1回娘の誕生日だけ会う機会が与えられています。今年はディズニーシーに行く予定でしたが、娘からの希望は昔家族でよく言っていた遊園地でチョコチップミントアイスを食べる事でした。実は元妻は再婚予定で、娘は昔の楽しかった思い出に浸りたかったのでしょうか。

 

ゴミ屋敷モノクローム

「ゴミ屋敷」はある町の老婆の家です。町の職員をしている主人公。主人公は老婆にゴミ屋敷を綺麗にするように訪問します。片付けの許可を得る最中に、老婆が倒れてしまいます。そして強制的に片すことが出来る事に。老婆はなぜ、ごみをため込んでいたのか?ゴミに埋もれた物とは一体。心に残る話です。

 

胡瓜の馬

「胡瓜(きゅうり)の馬となすの牛」これは仏壇にお供えする物です。これらは死者たちの乗物で、行きは早く帰ってきてほしいから速い馬で、帰りは名残を惜しみたいから歩みの遅い牛でという意味です。昔の恋人の死、家族の死について考える物語となっています。

 

月の上の観覧車

「観覧車」は主人公に亡くなった人を引き合わせるためのキーアイテムです。母、父、嫁、息子。人生年を取ると大切な人亡くなることが多くなってきます。もしこの観覧車があれば、あなたには会いたい人はいますか?ぼくはまだ30歳ですが、います。大切な大切な人が。

まとめ

自分にとって過去を振り返るキーアイテムは何になるのか考えさせられました。過去を振り返るタイミングは人それぞれです。「親の死」、「大切な人との別れ」、「自分の死期が近づいた時」など何か大切なものを失う時なのかもしれません。今の自分には思いもよらなかった物がキーとなり思い出の反芻をさせてくれるかもしれません。

皆さんは過去を振り返った時、やり直したいことはありますか?今の僕30歳はないです。過去の自分があるから今の僕や家族があると思っているからです。でも、亡くなった大切な人には逢いたいなとは毎日思っています。