<ビジネス書>脱炭素経営入門 松尾雄介作
読書時間 8時間
オススメ度(5段階評価):3.5
#環境問題#気候変動#地球温暖化#再エネ#削減目標
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はじめに
昨今話題になっている脱炭素化、気候変動について勉強したのでその本の紹介です。少し固い本なので自分なりにかみ砕いて話が出来たらと思います。私は薬剤師で、環境問題、気候変動、SDGsについては全くの無知です。初心者が読むにはかなりハードルが高い本でした。頑張って読んだ分、現在の世界の流れ、20-50年の社会の情勢について勉強できました。
概要
タイトルに経営入門とありますが、経営学として売上などの数字についてはあまり触れられていません。気候変動について基礎的な事から始まり今後どのように世界は流れていくのか学べます。各章の終わりには「まとめ」として筆者が大切なことを書いてくれています。途中で話が分からなくなった人(僕)でも要点を理解することが出来ます。
2015年COP21(気候変動の国際会議)では世界の名だたるグローバル企業、投資家、各国の中央銀行などからCEOや会長クラスのトップリーダーが参加しました。そして登壇者は環境担当の役員ではなく、社長であったり、最高財務責任者、最高投資責任者でした。日本企業で社長クラスの参加者はなかったというのが、世界との認識の差となって表れています。日本での気候変動の認識は「エコ」くらいにとどまっているというのが現実です。
第一部では気候変動とは何か?から入ります。気候変動を回避へ、気温上昇は1.5℃以内が求められることが詳しく述べられます。
第二部では気候変動が与える企業へのリスクが書かれています。物理的リスク、政策リスクが説明され、その上で機関投資家がどのように考えていくのか書かれています。
第三部では脱炭素経営の実践として実際の会社がどのように考え、実例を交えて書かれています。リコー、武田薬品、富士通、三菱地所、大和ハウス工業、三井不動産、メンバーズ、芙蓉総合リース、積水ハウス、戸田建設の取り組みについて書かれています。
内容
第一部
気候変動か、地球温暖化かどちらが適切な言葉か。現在国際的には気候変動で統一されています。気候変動には気温の上昇だけでなく、台風の大型化や乾燥化等の広範な気候変化を含む概念と解されます。
COP21では「世界的な平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃までに抑える」ことが決まりました。ある気温を超えてしまうと、自然界でドミノ倒しのスイッチが入り、人間の手に負えなくなります。そのスイッチが入る臨界点が「2℃前後」と考えられているのです。
自動車業界では現在脱炭素を目標に電気自動車や水素エネルギーで走行する車の開発に熱が入っています。しかし、自動車の製造、走行時、廃棄時、原動力の電気を作るときにCO2が排出することを忘れてはなりません。
第二部
気候変動によるビジネスのリスクとして①気象災害等による物理リスク②脱炭素社会へと政策が転換・移行することによる政策リスク③訴訟や賠償といった事柄に関連する責任リスクの3つが存在します。
①物理リスクとは台風、洪水、山火事といった自然災害により企業の保有する設備やサプライチェーンが被害を受けることを指します。短期的な被害として、工場が一時的にストップせざるを得ない等になります。中長期的なリスクとして、被害件数の増加などから保険料の値上げや加入時の審査の厳格化などが上がってきます。
②政策リスクとは政策の変化によって、様々の商品やサービスの市場が拡大し縮小し、直接的な影響を与えます。日本では2050年の「カーボンニュートラル」、欧米では「グリーンディール」、自動車業界ではLCA規制があります。
気候変動というまだ見えぬリスクに対して問題意識を考えることが重要になってきます。
そして大きなお金を動かす機関投資家(中長期的な運用を行う)はこの気候変動に対してどのように考えるのでしょうか。「長期的な運用益の最大化」を志向しており明日の利益より10年から30年先の運用益に目配りしています。気候変動が長期的にもたらす影響を自分事として捉え、それによるリスクや資産価値の根本的な見直しを行い、今後資産の再分配が行われることが予想されます。
第三部
ここでは各企業の取り組みについて書かれています。
今回は武田薬品の取り組みを紹介していきたいと思います。
武田薬品は「気候変動に対応することは今世紀の世界の公衆衛生における最大の機会になりうる」と考えています。つまり、気候変動に対応することがマラリアやデング熱等の蚊を媒介する感染症拡大防止等につながり、世界の公衆衛生(=患者さん)のためになると考えています。医薬品業界は直接的に気候変動の問題に関与することはないかもしれませんが、武田薬品は上記のように捉えて対応していこうとしています。
まとめ
僕は薬剤師としてこれからの世界にどのように貢献できるのか、正直まだわかりません。ですが、今回この本を読むことで、少しだけこの分野の知識はついたと思っています。気候変動とは一体なんのか?世界は一体この問題にどのように立ち向かっているのか?それぞれの会社はこの問題に対してどのようにアプローチしようとしているのか?勉強できました。今まではニュースの内容もほとんど理解できませんでしたが、どんなことを伝えようとしているのかわかるようになった気がします。今回学んだことを自分の中で反芻しながら日々の生活で還元出来たらと思っています。