節約にゃんちゅうファミリー

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<ビジネス書>MINERVA 知の白熱講義 池坊専好×鎌田浩毅 いけばなの美を世界へ 女性が受け継ぐ京都の伝統と文化

<ビジネス書>MINERVA 知の白熱講義 池坊専好×鎌田浩毅 いけばなの美を世界へ 女性が受け継ぐ京都の伝統と文化
出版:ミネルヴァ書房 初版:2022年  読書時間:5時間
オススメ度(5段階評価):2
スマートフォンなどのデジタルデジタルデバイスに忙しくなりしんどくなっている方にオススメです。いけばなは日本の美学に触れることができ、お花という実体を触れることができます。

 

 

はじめに

2人の専門家が対談形式で話が進んでいきます。いけばなのことだけが淡々と語られるわけではないです。ましてやお花の哲学的や技術的な部分だけが取り上げられている物でもないです。現代社会における「いけばな」の立ち位置とは、「いけばな」がもたらす利点とはなどが書かれています。現代社会はスマホやパソコンといったデジタルな物が主流になり、実物を触ることが減っています。一方で「いけばな」というのはお花という実物を触り、お花を見ます。デジタルという架空の物に疲れてしまった時、日本の美学に少しだけ触れてみるのはいかがでしょうか。

池坊専好とは

華道家池坊時期家元。いけばなの精神性・理論を紐解き、より豊かに生きる方法やビジネス分野にも通じる視点でこれからのいけばなを発信しています。音楽やテクノロジーなど、他分野とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。東京オリンピックパラリンピック競技大会組織委員会文化・教育委員。2025年日本国際博覧会協会理事・シニアアドバイザーも務めています。
ひと言でいうと、発信や新しいことのも積極的な時期家元の華道家
対談ではおひとやかで控えめな印象を受けます。その一方で自分の信念に対しては一本筋の通った頑固さが見えます。

鎌田浩毅とは

ひと言でいうと、地質学者。
本書ではインタビュアーです。インタビュアー聞き手のはずなのにとにかく語ってきます。お花のことももっと知りたい勉強したいというタイミングでこの人がしゃべり倒してますね(笑)。地質学以外にも心理学などにも精通しているようでそれらについても語られます。個人的にはもう少し控えめでもよかったかなと(笑)

本書をパート毎に内容を書いていきます。

第Ⅰ部「女流華道家」が選んだ道

第Ⅰ部では「池坊専好」がどんな人生を歩んできたのかわかります。「池坊」実際の苗字です。「専好」というのは得度(仏教における僧侶となるための出家の儀式)し、与えられた名です。子供時は池坊由紀という名前でした。この章では「池坊専好」に焦点を当てて書かれています。

第1講 子供時代~大学ー静かな葛藤と成長

京都の父親が池坊の家元の家に生まれます。地元では有名で苗字を聞くだけでどんな家柄なのかわかるほどです。小学校に上がるまでは活発で外で遊ぶのが好きだったようです。学校は意外にもキリスト教の小中高一貫校に通われていました。いけばなという日本や仏教のイメージがありましたが、シスターがいる学校に通われていたようです。仏教やキリスト教のような宗教の学校に通わせたかったという親の意向があったようです。小学校に上がると活発だったこれまでと違い、読書が好きな少し大人しくなったようです。友人もそこまで多くなく、社交性はあまりなかったと書かれていました。あまり目立つタイプではなかったものもクラスのみんなの前で発表する出来頃が印象的だったようでそのエピソードなども書かれています。いけばなを本格的にはじめたのは中学生からだったようです。その頃から池坊の家元を継ぐことは認識していました。
大学は池坊の苗字を聞いてもあまり知られていないところを選びたく、東京の学習院大学に進学されました。フランス文学と国文学を学び、卒業のタイミングで池坊へと戻ってきます。

第2講 得度以降ー「社会の中の池坊」を見つめて

池坊専好さんがなぜ得度(仏教として出家)しているのか気になりますよね。ここでそれが明かされます。池坊の家元は六角堂(天台宗系のお寺)の住職を兼ねるという習わしがあります。現在、池坊専好さんは副住職です。元々池坊のいけばなは仏前供花から始まっています。
大学卒業後は色々苦労もあったようです。就職は池坊総務所で、家族の運営するところでした。そこでは自分よりいけばな歴の長い人(60年以上の方などもおられたようです)と関わることも多かったようです。
お花の道とは何か?常に哲学的に悩まれている様子が描かれています。生徒に教える時やほめる時、一つとっても押しつけにならないようにその人の良さが無くならないように色々配慮しているようです。そして自分の道をさらに究めるべく、京都工芸繊維大学(国立大学)の大学院に通われて、博士課程を取られています。池坊が社会に与える影響、いけばなが社会に与える影響などを考えながら色々な活動をされているようです。次の世代に「花」を伝える駅伝走者という思いがあるようです。
これから池坊家元として「いけばな」以外と「いけばな」を結び付け哲学的に紐解いく意思が僕には伝わりました。

第Ⅱ部華道の世界

第Ⅱ部では「いけばな」に焦点が当てられます。現在いけばなは女性がするのが一般的です。教養として、花嫁修業の一つとして嗜まれています。いけばなの歴史や現代、未来と「いけばな」が担っていく役割は何なのか書かれています。

 

第3講 いけばなの基礎

いけばなとは時間と空間を同時にいける営みと池坊専好さんは説いています。花だけが大切なのではなく、それを飾る場所も大切です。また、良い物を足し算するのではなく本当に必要な物だけする「引き算」こそが大切なようです。
絵は空白を埋めるために足し算式に書いていきます。逆にいけばなは一輪の花を輝かせるために引き算的に空間(何も置かないこと)を大切にします。いけばなは何も無い所に意味を持つのです。
いけばなは旬の花をその季節にいけます。ですが、化学進歩により年中どの花も手に入りやすくなっています。また、花展の時の花選びも難しいようです。展覧会は7週間以上続くこともあるようで、保持しやすい花を選択せざるを得ない時もあるようです。
ちなみに花を固定するのに針金やテープなどを使うことは違反ではないようです。
いけばなは言葉抜きで伝わるインターナショナルなものです。「美しい花がいけてある」それが全てです。最近では海外にも支部があるようです。外国の方は概念などもないため、男性でする方も多いようです。

第4講 いけばなの歴史と女性

いけばなの歴史は日本書紀から記載があります。死者を花で弔ったようです。卑弥呼の時代には花は「命の力が宿る」、「神を迎えることができる」と考えられていました。6世紀に仏教が入ってきた時に仏前供花という風習が始まりました。15世紀末にはいけばなに関する最古の口伝書が見つかっています。
18世紀に入り女性がいけばなをはじめます。実はそれまで華道は主に男性するものでした。花を取りに行ったり、意外と「力」を必要とするようです。
明治になると余力があればいけばなを嗜んだ方が良いとされるようになります。そして戦後、「いけばなの先生」という職業が一般化されはじめ、生計を立てる人が出てきたようです。
花嫁修業の一環として女性のみがやるという刷り込みがあり、男性でやる人が現在日本では減っています。海外ではその刷り込みもないため男性でもやる人は多いみたいです。
昔のいけばなは写真では残っていませんが、絵で残っていたりします。科学技術を使って再現することも可能になっているようです。

 

第5講 いけばなの本質と未来

池坊としての展望もこの章では語られます。先人から受け継いだ知恵をどのように受け継いでいくか書かれています。先代(父親)はいけばなの常識を超えたことをしたようです。家元として芸術的な作品を多数作成した者、住職として六角堂を改築した者、経営者として教育に力を入れて短期大学を作った者など家元によって個性があります。池坊は家元としての顔、六角堂の住職としての顔、経営者としての顔の3つを持っています。どれも疎かにすることはできません。
いけばなの本質は「花を触る」ことにあります。現代社会ではスマホやパソコンだけ触り、誰とも会話せず1日が終わる人もいます。いけばなは生きているお花を触ることが出来ます。ネットは悪いことだけではありません。いけばなの先生を検索できます。以前は実際に赴いてみないとどんな先生なのかわかりませんでした。今は口コミなども検索できるし、お花教室も調べられます。
池坊専好さんが生徒に教えている書きます。いけばなの作法は大切だが、感じ方は自由であるように指導しているようです。いけばなを見る時も見方というのはあるが、感じ方は自由であるように指導しています。美意識というのは教えはするが、強要しないように気を付けているようです。
いけばなについての教養がない方に伝わらない時、外国でいけばなを実践して伝える時、いけばなに興味がない学生に授業する時、池坊専好さんが感じていることは勉強になります。

 

まとめ

いけばなについてだけが書かれている少し重たい内容なのかと思っていましたが、そんなことはなかったです。親世代に聞くとお花やお茶などは教養として幼い頃やっていたと言います。僕自身全く華道は分かっていませんでしたが、今回のこの本を読んで少なくとも「池坊専好」とはどんな人なのかは勉強になりました。教養が増えたと考えるとこの本を読んで良かったと思っています。また、いけばなの歴史や本質を学ぶことができ、少しだけ「和の心」を持つことが出来たと思っています。スマホなどが主流となっている現代社会にこそ古来からある日本の文化を大切にしていきたいと思いました。